本の読み方・自主ゼミの仕方・本の紹介
明らかに物理の教科書やゼミの仕方を探して来ているようなキーワードで検索してくる人が多いので、少しでも役に立ったら嬉しいと思い、良いと思うサイトへのリダイレクション&書き散らし*1。
まず、本の読み方について。山崎さんのページの「本の読み方について」が良いと思うのでその紹介にとどめておく。ここでは物理と数学の本の紹介もされている。
http://www-hep.phys.s.u-tokyo.ac.jp/~yamazaki/books-index.html
自主ゼミの仕方も色々とあると思うけど、この通りに出来ればどう考えても十分だと思えるものとして、河東先生の「セミナーの準備の仕方について」を紹介しておく。何も参照せずに発表できればそれは良いけど、とりあえず物理の場合には実際の所はメモを参照しながらの発表で良いと思う。また、特に物理系の本では現象論的な式を認めて途中で論理的なジャンプをすることがあるけど、そういうジャンプがある場合にはそれがあることをきちんと認識して、どういう現象論なのかを理解出来ると良いと思う。また、論理的に追うことが出来る場合には結果まで辿り着くだけではなくて、結果を適当なグラフに書いてみたり、適当な絵を書いて理解すると良いと思う*2。
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/sem.htm
リンク先まで行くのが面倒な人のために僕の言葉で軽く箇条書きでまとめると、
- 色んな本を読もう。同じことであっても視点を変えると色んなものが見えてくる。
- どんな偉い先生が書いた本でも鵜呑みにせずに批判的に読もう。論理のジャンプはあるか?本当に自明/易しいか?どんなに売れている本でも誤植はあるかもしれない。
- 鵜呑みにせずに読む為には自分で計算することは大事。内容が抽象的なら具体例を考えると理解が深まる。結果をグラフや絵で書いてみるのは有益。
- 教科書に書いてあることについてのみではなく、読んでいて自分で思いついたことについてもじっくりと考えよう。
- 周りの人と議論しよう。特にセミナーは良い議論の場になる*3。ただ、自主ゼミをする場合にはリラックスしすぎてぐだぐだにならないように要注意。
- 自分のペースで理解しよう。本を理解するために他の人と議論したりゼミをするのは有益だけど、ゼミや議論という手段に捕われて、理解がおろそかになっては駄目。
- セミナーで発表する時は予め頭の中で内容を展開できるようにすると良い。
当然ながら、リンク先を読んだ方がより良いと思われます。
次に、大学で物理を勉強するのに良いと思われる本をリストアップ。ただし、基本的には自分で読んだことのあるもので、力学から統計力学までは日本語版が手に入るものに限る。大学一年の自分に「こんな本が良かったよ」とアドバイスするような気持ちで。
なお、長らく更新をしていないけど、大学4年になる直前の時点の本棚は
http://d.hatena.ne.jp/a-ki_room/20050601/1128514210
のような感じ。まとまった推薦書のリストアップページとしては九大の野村准教授のページを紹介しておく。
http://maya.phys.kyushu-u.ac.jp/~knomura/research/guide-phys/bookguide-phys-j.html
力学。基本的には高校生の力学を微分を用いて書ければそれで半分はクリア。あとは和の記号を用いて自然に多粒子系に拡張したあと、解析力学の形式にまとめあげれば良い。保存則が基本的な対称性と結びついていることを理解すべし。綺麗なものとしてランダウ。ラグランジアンから始めているので非常に綺麗。ニュートンの運動方程式から始めるものとしては何を挙げれば良いのか分からないけど、自分で読んだ阿部を挙げる。
- 作者: エリ・ランダウ,イェ・エム・リフシッツ,広重徹,水戸巌
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- 作者: 阿部龍蔵
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- 作者: 砂川重信
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- 作者: 高橋秀俊
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- 作者: ファインマン,宮島龍興
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場の古典論―電気力学,特殊および一般相対性理論 (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程)
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量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ)
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- 作者: 田崎晴明
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http://d.hatena.ne.jp/a-ki_room/20061220/1166719288
を参照。
以下、物性に偏ったラインナップ。ここから英語も含む。
固体物理、物性物理。バンド描像をきちんと理解して、一電子描像で行われている近似は何なのかということを抑えるのが最低限なのだと思う。固体物理の本は割と最初の方に点群の話が長々と書いてあって読むのが嫌になるイメージがあるが、周期場ポテンシャル中ではブロッホの定理が使えることが本質であって、結晶の対称性は後から詳しく議論すれば良いと思う。一つ推すならグロッソ=パラビチニ。網羅的なものとしてはアシュクロフト=マーミンが良いと思う。問題解説も出ているし。柔らかい固体物理にも触りたい人にはチェイキン=ルーベンスキーとか。断熱的連続性や対称性の破れについてのむつかしい本としてアンダーソン。
- 作者: G.グロッソ,G.P.パラビチニ,Giuseppe Grosso,Giuseppe Pastori Parravicini,安食博志
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固体物理の基礎 上・1 固体電子論概論 (物理学叢書 46)
- 作者: アシュクロフト,マーミン,松原武生,町田一成
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物性物理学演習―アシュクロフト・マーミンの問題解説 (物理学叢書 (別巻))
- 作者: 前田京剛,加藤雄介
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チェイキン&ルベンスキー現代の凝縮系物理学〈上〉 (物理学叢書)
- 作者: P.M.チェイキン,T.C.ルベンスキー,P.M. Chaikin,T.C. Lubensky,松原武生,東辻浩夫,鶴田健二,東辻千枝子,家富洋
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Basic Notions Of Condensed Matter Physics (Advanced Books Classics)
- 作者: Philip W. Anderson
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Methods of Quantum Field Theory in Statistical Physics (Dover Books on Physics)
- 作者: A. A. Abrikosov,L. P. Gorkov,I. E. Dzyaloshinski,Richard A. Silverman
- 出版社/メーカー: Dover Publications
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Quantum Theory of Many-Particle Systems (Dover Books on Physics)
- 作者: Alexander L. Fetter,John Dirk Walecka
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- 作者: 永長直人
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Quantum Many-particle Systems (Frontiers in Physics)
- 作者: John W. Negele
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- 作者: J.M.ティッセン,松田和典,道廣嘉隆,谷村吉隆,高須昌子,吉江友照
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- 作者: 宮下精二
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とりあえず書きかけでアップ。他にリストアップできそうなもの。
場の量子論の入門書よりはむつかしい本。
フェルミ液体。
強相関一般。
超伝導。
磁性。
臨界現象。
非平衡。
啓蒙書的なもの。
その他。
リストがあって当然に思えるのに、僕にはリストアップできそうにないもの。「流体力学 教科書」のようにぐぐった方が良い。理論ミニマム的には凄く不十分なのだけど…。勉強しないと。
流体力学。
量子情報。
量子光学。
素粒子や宇宙の本は無理です。
*1:ちと長い意見があるという人はakiroom.blog@gmail.comへ
*2:学部4年の頃の必修のゼミでは大事な式まで辿り着くと、先生に「ちょっとそこ絵に書いてみて」と言われたものです。
*3:本論からずれるのでfootnoteで。英語を話すことが重要である理由の一つは、英語で議論ができるということにある。英語で議論ができれば、論文を経由せずに直接、効率的に理解が出来る。(by Hal.田崎さん。)
*4:佐々・田崎・清水と色んな本が揃っていて、今の学生は恵まれているなぁ…と思いつつ、読んだことは無いので佐々先生のは挙げず。あの薄さは良いだろうと思うんだが。
*5:ただ、出版されたやつはまだ読んでない。