シュレネコ

http://d.hatena.ne.jp/nuc/20060608
とりあえずnucの所にトラックバックはてなブックマークをするのは控えておきます…というか、あのページが300以上のブックマークされているのは「これってまずくないか?」という物理屋さんがこぞってブックマークするからじゃないの?とも思ったのだけど、実際に「わかりやすい解説」なんて感想を書いちゃっている人も結構いるみたいなので、そうではないのかもしれない。
とりあえず思ったのは、問題のページ(http://hp.vector.co.jp/authors/VA011700/physics/catwjs.htm)は、シュレーディンガーの猫の核心をきちんとついていないばかりか、それていった先で説明していることもはちゃめちゃな気がするということ。経路積分とか何さ。
シュレーディンガーの猫を「パラドックス」と呼ぶとき何が「パラドックス」か?量子力学では状態が波動関数の重ね合わせで記述されるとすると上手く予測ができるのだけれど、その時に出てくる重ね合わせというのが気持ち悪い。シュレ猫のような状況だと重ね合わされるのが「生」と「死」というあまりにも極端な状態なので気持ち悪さがひきたち、その気持ち悪さが「パラドックス」だと思っていたのだけれど違うのだろうか。
そもそもシュレ猫論文はEinsteinが重ね合わさった波動関数の非局所性について嫌だ嫌だ言ってたらSchroedingerが反応して論文書いたもののはず*1。だから核心を突くのなら重ね合わせやマクロな実在や非局所性について言うべき。本当はマクロな実在についての示唆を与えた論文なんだろうけど、一般人が最初に気持ち悪がるのは多分重ね合わせ。だから深追いせずに重ね合わせについて何かコメントすべき。
重ね合わせはそれだけで十分気持ち悪いのだけど、一般人向けの説明だと簡単にしようとするあまりに語弊を含む言い方になっているケースがあり、これもまた「パラドックス」の原因かもしれない。「生の状態と死の状態が重ね合わさっている」なら良いけど、「生きている状態と死んでいる状態が同時に成立している」なんていう言い方がされている場合もあり、これはいただけないかと*2。「成立している」のに「確率的」なんていうへんてこな言い回しがパラドックス促進の助けになっていると思う。
シュレーディンガーの猫をきちんと理解するためには量子力学をきちんと勉強する必要があると思うんだけど、そこそこの理解なんてものがあっても良い。そのためには啓蒙書を読めば良いのだろうけれど、そこそこの啓蒙書に出てくる記述がよろしくないというのが一般人にとっての「パラドックス」なんじゃないか。

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シュレーディンガーの猫は生きていると同時に死んでいるとされる。これは多少語弊があり、生きている状態と死んでいる状態が重ね合わさったへんてこな状態にあると理解するのが良い。重ね合わさった状態というのが曲者であるが、これは生きている状態も死んでいる状態が同時に成立しているというわけではない。箱をもしも開けたなら、生きていることもあり、死んでいることもあるという意味で重ね合わさっているとされる。『設定からして猫が生きているか死んでいるかなんてのは当たり前だし、わざわざ重ね合わせとかいう変な言い方しなくてもよいじゃん』という指摘がある場合にはその通り。この重ね合わせが本領を発揮するのは波動関数が波として干渉する場合*3などであり、そのようなケースを実際に見ないと重ね合わせの雰囲気が全く掴めないかもしれない。『猫の例をつかって干渉させたらどうなるの』と思う人もいるかもしれないけれど、猫くらい大きくなってしまうと干渉の大きさが無視出来るほど小さくなるという事実がある。このような事実を調べるための問題提起としてシュレーディンガーの猫は役に立ったのであり、別にパラドックスなわけではない。パラドックスだとしたら、それは説明する側が『量子力学って不思議なんだぞ〜、すごいだろ〜。』と強調したいがために言葉遣いのナイーブな所を無視してしまった説明を聞いたからではないかな。確かに歴史的には重要で、これをきっかけとして云々………」

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書いていてすごく脱線したくなってきた。やっぱ量子力学勉強しなきゃ駄目な方に一票。重ね合わせが肝だとしても、シュレ猫の例の中では重ね合わせをきちんと説明できないのだから。
あと、上の括弧内の説明で分かってもらえる気もしないけど、nucの説明でも無理じゃあないかな。何か(一般人との間に)トビがありそうだ。

*1:原論文名は確か"Die gegenwartige Situation in der Quantenmechanik"のはずなので、ドイツ語読める人で興味ある人は是非。僕は読んでないけれど。

*2:上半身が生きていて下半身が死んでいるなんて説明よりは非可算無限大倍くらいまともだが

*3:干渉の例としては水面波が良いかなぁ。