アインシュタイン・ファクター

アインシュタイン・ファクター

アインシュタイン・ファクター

自分の何気ない自由な発想、特に自由な発想のうち「天才」になるための大きなファクターになるようなものを、ここではアインシュタイン・ファクターと呼ぶ。そのファクターを拾い取るための、言うならば、「脳の筋トレ法」ハンドブックだと思う。もしくは、「自由な妄想法*1」とでも言うべき本。
この手の本の導入部分には大抵「脳みそはそのうちの一部分しか使われていない。これは天才と言われる人でも同様」のようなことを書いてあるのだけど、それを支持するためにとある研究報告を持ち出してくるのならリファレンスをきちんと書いて欲しい。「こういう…研究報告もあります」だと、胡散臭く思えてならない。まぁ、些細なことだし、スルーはするけど。
以下、本の中で紹介されている方法の各項目についてメモ。どれもこれも基本的には自分の思いつきを拾い取り、自分の妄想を広げるためのテクニック。放っておくと人も頭も怠けてしまうのが常だろうから、何かしらの頭を使うテクニックがあれば幸い。ただ、誰にでも合うような万能の方法なんてのは無いだろうから、自分に合うものが少しでもあれば儲けもの。
使えそうな部分を自分の言葉でまとめると、

  • 気になる思いつきが頭をよぎったら、執拗に頭の中で追いかけながら具体的に大きくアウトプットをすること
  • 判断を保留し、大量のインプットを溜め込むことで、自分の思い込みや偏見から離れた選択を行うこと
  • 妄想と、頭を使うことを楽しむこと

のように、イメージストリーミングとブレーンストーミングに落ちるような気がする。脳をどのように使おうとも、インプットとアウトプットしかないわけで、方法論としてはこの二つをどのように行うかが本質なんじゃないかなと思う。

「イメージストリーミング」:ぼんやりとした思いつきを、大きな声で、五感をフルに使うような感覚で、現在形でアウトプットする。ある種の瞑想状態(催眠とは別)に入る為の方法論と言えば良いか。本にあるようなトランス状態まで行けばしめたものだろうけど、そうじゃなくても一般に思いついたことをアウトプットする時に感覚を総動員して「大きく(大量に書き出すのでも可)」アウトプットするのは大事だと思う。
「通勤スペシャル」:通勤中にボイスレコーダーでメモすることを挙げているけど、その正当化のために「ボイスレコーダーを持っていることを見せれば、まわりの人たちはきっとあなたのことを、手紙を口述している有能な管理職だと思い、変な目で見られることもなくなるでしょう」とあるのが笑えた。ボイスレコーダーを持ち込むくらいのレベルなら、「変な目で見られてもいいじゃないですか。それ以上の見返りがあるのですから」くらい書けばいいのに。あと、自分が実際にやるんだったら、ボイスレコーダーではなくて携帯電話の録音機能などを使うと思う。でも、電車内で通話は嫌だから、やらないだろうな。メモ帳に書きまくる程度で十分な気がするし。
「時間と空間のテクニック」:アインシュタインが「光にのったらどうなるだろう?」という疑問をもとに特殊相対論を作ったように、自分を電磁波の一種だと仮定するらしい。何だか曖昧だけど、日常生活とは全然違うスケールではどのような世界があるかを、そのスケール相応のプローブになったつもりで妄想する、と言い換えれば納得は出来そう。章の最後に「果てしない世界や宇宙をのぞき込める顕微鏡」という表現があった。こっちの方が的確だし素敵だと思う。
「インスタント再生」:昔のある出来事をイメージストリーミング的に思い出す*2。思い出すという行為は簡単なものではないので、「いつでも出来る頭の筋トレ」のようなものとして分かりやすく良いプログラムだと思う。
ブレーンストーミング」:どんなに馬鹿げたアイデアでもいいから集団でどんどんアイデアを出し続ける。良いとは思うんだけど、意思の疎通を十分速く行うために各人が大きな声でてきぱきと話すことは必須だと思う。ブレーンストーミングが効果をあげるための理由や「理論的背景」が色々と書かれているけど、共通するのは情報の多さや複雑さ。判断を一時保留して、大量にデータをインプットして混乱状態に陥ることで、自分や自分たちの偏見から逃れた発想を選択するという効果が期待できる。
「質問サンドイッチ」:無作為に適当な質問を3つほど生成して、それに対する自分の答えの共通点から、自分が気づいていない質問(アプローチ)を見つけ出す。OBLIQUE STRATEGIESみたいなもんかな。
マスターマインドの原理」:脳内に偉人を用意して、その英知を借りるらしい。脳内に相談相手を作って「一人会議」を行うことだけでも十分な効果がありそう。別に偉人じゃなくても。また、脳内に用意する他に、なりたいと思う人になりきるというテクニックもあるようだ。模倣は大事。ただ、ここで用意される偉人や天才は、結局の所自分がイメージできる偉人や天才に過ぎんのよね。殻を大きく抜けるというよりは、理想に近づくための駆動力のようなものだと思うべきかな。

*1:個人的には、妄想は足りていて、むしろどう実現するかの方が不足している気がするので、もっと実践的な本を読む、または本なんて読まずにひたすら実践すべきなのかもしれない。

*2:何週間分かの日記を一気に思い出して書くのも一例に入るだろうか。