戸塚教授の「科学入門」

戸塚教授の「科学入門」を読んだ。
斜め読みの所はすごいスピードで読んだけど、ついついゆっくりと噛み締めて思いついたことをメモりながら読みたいような箇所もたくさんあった。亡くなられる2週間前のインタビューと、blogに書いていたという6つのテーマをまとめた内容になっている。最後のテーマにノーベル賞をとった小林益川の話が出てくるけど、ノーベル賞とかを全く抜きにしてもお薦めの本だ。背伸びしたい高校生がいたら是非読んで欲しい。背伸びをしなくても、目を開けばそこら辺に楽しい物は転がっているんだと気づけるかもしれない。高校の範囲とか大学の範囲とか、そういうの抜きにした基本的なことが書いてある本だと思う。
この本、高校生の頃、蛍光灯を見て不思議に思ったあの時の自分に渡すことが出来たら良いのに…でも、それは無理で、そのことの裏返しを考えると、知識や良い解説は蓄積されていくということが実感される。この本の帯に最後のインタビューから引用がしてあるんだけど、そこに「(若い皆さんは)我々より頭が良くなってるはずなんだから、彼らに任せれば簡単にやっちゃうよ、って。そういうことを、期待しています」とある。ニュートンの巨人の肩的な蓄積が沢山あって、それは増え続けているのだから、そりゃあどんどんレベルアップするはずだ、と改めてそのように感慨深く思うことが出来た。モチベーションもアップ。これだけで今自分がこの本を読んだ価値はあったのだと思う。
で、話は違うのだけど、同じような本の物性バージョンはないものか。理論の人が書くのも十分価値はあるのだけど*1、一冊だけと言われれば、できればベテランの実験の先生で広い視野を持って物理を楽しんでいる人に書いていただきたい。高校生で物理に興味が有る人でかつ啓蒙書を読んだ人から聞く本の内容って大抵ハイエナジーか量子情報なのが少し悲しい。

*1:ふと思い出した。A先生の固体物理の本っていつ出るんだろう。